連載読み物
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ボールの進化によってボウリングはどう変化した?

⑪ “PL-31の法則”ってご存知ですか?

先月号で、レーンメンテナンスマシンの進化が、ボウリングにどのような影響をもたらせたかについてお話しをしました。その流れで、今月号では、ホームセンターでリーグ戦を楽しむ程度のボウラーの方には、ちょっとディープすぎる情報かもしれませんが、スポーツコンディションの攻略法についてお話しします。

かつてボールメーカーにとって、いかに大きな曲がりを生み出すかが、開発の主要なテーマでした。ボウラーも、PBAのロバート・スミスに代表されるような、レーンの幅をいっぱいに使って、強烈な曲がりのボールを駆使するクランカータイプのボウリングが脚光を浴び、ボールを曲げる技術が注目された時代がありました。

ところが最近は、レーンコンディションに対して“板目を多く使わない”とか“タイトに攻める”というような言葉をよく耳にするようになりました。それは一言でいえば、オイルに左右されないためには、できるだけ板目を多く使わない方が得策だということがわかってきたからだと思います。

数年前にインターネットで、USBCが“PL-(マイナス)31の法則”というのを発表しているのを見つけました。最初のうちは私自身何のことなのか理解できませんでしたが、いわゆるエグジットポイント(ボールが、オイルが入っているところから入っていないところへ出ていく出口)が、どこが有効かを見つけるときに、目安になる法則だということがわかってきました。

例えば40フィートのオイルコンディションなら、そこから31を引くと9。つまりオイルの出口で9枚目を通過するようなライン取りをすると、ストライクになる確率が高いですよということなんです。

もちろん、曲げるタイプの人と、曲がらないタイプの人とでは、投げるラインは異なりますが、オイルの出口では同じところを通過するのが、どちらにとっても有効だということになります。

なぜそんなことがいえるかといえば、アメリカのケーゲル社が実際に実験をやったそうです。35フィートのときなら、どこがエグジットポイントとしていちばん確率が高いか、38フィートの場合はどこ…というような実験を続けて導き出されたのが“PL-31の法則”ということです。

ちなみに45フィートなら14枚目ということになります。つまりロングオイルになればなるほど、インサイドになるわけです。そういうことからも、板目を多く使うのは得策ではないということがいえます。

その法則は、あくまで比較的フラットなコンディションのときに有効であって、クラウンとか、両サイドのオイルが極端に薄いようなコンディションでは成立しません。しかし競技として取り組んでいるボウラーには、今後スポーツコンディションでの大会が確実に増えていくでしょうから、知識として頭に入れておいて損はないと思います。

著者プロフィール
日坂義人(ひさかよしひと)
1949年生まれ。東京都出身。ドリラー・インストラクター歴47年。神奈川県のスポルト八景ボウルとハマボールに店舗を持つヒサカプロショップ代表。日本オリンピック委員会強化スタッフ・JPBA理事、JBC指導委員会認証部会公認ドリラー。JPBAインストラクター委員会メンバー。インターナショナルシルバーコーチ。

⑩ レーンメンテマシンの進化がもたらす影響

ボウリングは、いうまでもなく相対するレーンコンディションをどう攻略するかという競技でもあります。そのレーンについて、ウッドからシンセティックへと素材が変わってきたことは、以前にも触れました。もうひとつ大きな変化は、メンテナンスマシンの進化です。

もともとはレーンのクリーニングからオイルの塗布まで、1本1本人の手でやっていた作業を、自動化するマシンが1980年ごろに登場し、日本のボウリング場にも急速に普及していきました。しかし私が神奈川国体の強化委員を依頼された平成10年(1998年)ごろでも、まだ横方向のオイル分布の調整はほとんどできなくて、縦じまのレーンしかできませんでした。

その後、当時の米・AMF社が発表したツインスターというマシンは、クリーニングをしながら横方向の分布がある程度きれいにできるというのが売りでした。さらに米・ブランズウィック社が開発したオーソリティーでは、板目39枚の1枚ごとにオイルの違いを出せるようになりました。とくにこの10年ほどのメンテナンスマシンの進化は目覚ましいものがあります。わかりやすくいえばインクジェットプリンターのようなもので、非常に細かい設定が自在にできるようになりました。

PBAでは、トーナメントを、バイパー、シャーク、スコーピオン、カメレオン、チーターの5パターンのアニマルコンディションのなかから選んで行っていますし、WB(旧WTBA)の国際大会などでも、事前に大会コンディションを発表しているようですが、それも設定どおりに正確にオイルを引くことができるマシンがあってのことです。

しかし、設定どおりにオイルが塗られたとしても、まったく同じコンディションが作られるわけではありません。とくにベースとなる、そのボウリング場のレーンの状態に大きく左右されます。レーン認証を受けているといっても、横方向のおうとつは約1ミリまでが許容範囲となっていますし、縦方向は規制がありません。普段のクリーニングの状態によっても違うでしょうし、同じセンターでも、“あのボックスに入るとどうもスコアが出ないんだよね”というような声はよく耳にします。

ましてやボールが、オイル吸着カバーといわれる素材が全盛の時代ですから、1投ごとにボールがオイルを吸っていきます。メーカーも、できるだけ変化を少なくするように、粘度調整などを研究しているようです。米・ケーゲル社の最新機種では、往きに粘土の高いオイルを引いておき、戻ってくるときに粘度の低いオイルを乗せるというように、2種類の違うオイルを引くことができるようです。

それにしてもグラフで示されたオイル分布はスタート時だけで、ゲームが進むごとに変化していくのは止めようがありません。だからそのように考えると、発表されたパターンをうのみにして戦うということ自体がそもそも間違いで、自分で投げて感じて、それにどう対処できるかというのが、ボウリングという競技の本質だと思います。

著者プロフィール
日坂義人(ひさかよしひと)
1949年生まれ。東京都出身。ドリラー・インストラクター歴47年。神奈川県のスポルト八景ボウルとハマボールに店舗を持つヒサカプロショップ代表。日本オリンピック委員会強化スタッフ・JPBA理事、JBC指導委員会認証部会公認ドリラー。JPBAインストラクター委員会メンバー。インターナショナルシルバーコーチ。

⑨自分のベンチボールを決めよう

エボナイト、ポリエステルの時代から、ウレタン、リアクティブを経て、現在のオイル吸着カバーへと、ボールの表面素材の変遷は、いかに摩擦力の高い素材を開発するかの歴史であったといっても間違いではないと思います。

しかしながら、摩擦力を追求する方向での開発競争も、ひと段落の感があるような気がします。際限なく摩擦力を高めればいいというものではなくて、レーンコンディションによって、あるいは個々のボウラーのスピードや球質によっては、摩擦力の大きさが、マイナスに作用してしまうこともあるのです。

現在市場に出ているボールの表面素材は、以前お話ししたように、ほとんどがオイル吸着カバーといわれるものです。それをタイプ別に分けると“ソリッド”“パール”“ハイブリッド”の3つに分類することができます。

それぞれにどのような添加物が使用されているのかは、メーカーは企業秘密として公表していないので定かではありませんが、ソリッドはトラクション特性が高く、オイリーなコンディションで有効とされます。逆にパールは、スキッド性がよく、ドライなコンディションで有効です。さらにその両方の長所を生かそうというのがハイブリッドで、ソリッドとパールの混合率を変えることで、ソリッド寄りからパール寄りまで、バリエーションは無限になります。

今やボウリングは、レーンコンディションに対してどのボールをチョイスするかが、重要なテクニックになっています。実際に、ボールアジャスティングの能力が高い人が好成績を残している傾向がありますし、制限がなければ、トーナメントに10個以上は持っていきたいというプロも大勢います。

しかし、自分で購入しなければいけないアマチュアボウラーの方が、それだけのラインアップを揃えるのは現実的ではありません。それでは、1年間に100個以上もの新製品が発売されるなかから、何を目安にボールを選んで購入すればいいのでしょうか…。

現在もアマチュアの方が求めるのは、より曲がるボールという傾向があります。私のプロショップでも、実際に売れるのは動くボールが圧倒的に多いのですが、ゴルフでいえばドライバーばかりを揃えてもしょうがありません。まずは自分のメインになるボールを探すことです。

“ベンチボール”という言い方がされていますが、今日のレーンはいつもより速いのか、あるいはいつもより曲がるのかというように、そのベンチボールを使うことで、その日のレーンコンディションを判断できるようなボールです。

自分にとってどれが最適なベンチボールかは、ボウラー個々の球質や投球スタイルによって、当然異なります。やはり信頼できるドリラーやプロボウラーなどにアドバイスを求めることが、間違いのないボール選びにつながると思います。ただ気をつけてほしいのは、プロボウラーは自分の感覚を伝えることが多いので、同じような技量を持っている上級者には非常に参考になりますが、圧倒的に多い中級者には、必ずしも当てはまらないことがあることを、頭に入れておいてください。

著者プロフィール
日坂義人(ひさかよしひと)
1949年生まれ。東京都出身。ドリラー・インストラクター歴47年。神奈川県のスポルト八景ボウルとハマボールに店舗を持つヒサカプロショップ代表。日本オリンピック委員会強化スタッフ・JPBA理事、JBC指導委員会認証部会公認ドリラー。JPBAインストラクター委員会メンバー。インターナショナルシルバーコーチ。

⑧ 一皮むいてパフォーマンスを復活

先月号に引き続き、ボールのパフォーマンスを維持するための方法についてお話しします。

現在はウッドレーンがどんどん姿を消し、ほとんどが合成レーンになってきました。合成レーンは基本的にリサーフェースの必要がない非常に硬い材質でできているので、ボール表面の泡の突起、つまり凸凹がレーンとの摩擦で、とくにローリングトラックの部分が削られてきます。いわば車のタイヤがすり減るようなもので、そうなればオイルを吸着できませんし、当然摩擦力は低下します。

では、パフォーマンスを復活させるためにどうするのか…。車のタイヤなら、すり減って溝がなくなれば復活はできませんが、ボウリングのボールは、皮をむくように表面を削り直すことで、新しい気泡の凸凹部分が表面に現れてきます。

“ボールスピナー”といわれるようなボールを研磨する機械を使用して、最初はサンドペーパーの目の粗いもので削り、じょじょに目の細かいものに変えて、最終的には発売当初の表面の状態に合わせていきます。そうすると、ボールがどんどん小さくなっていくんじゃないかと思われる方もいるかもしれませんが、サンドペーパーの荒いものでもミクロ単位ですから、まったく心配するようなレベルではありません。

各ボールメーカーもこの方法を推奨していますが、ボウラーのみなさんが自分でやるのは難しいと思うので、信頼できるドリラーの方などに依頼することになります。私はすでに実際に行っていますし、公認ドリラーのセミナーなどでは、こういうメンテナンスの方法があるということを、お客さんに発信してほしいという話をしていますが、まだ知らない人が多いのが実情です。

この方法でパフォーマンスを復活させることは、何回かは可能ですので、私は50~60ゲームに1回ぐらいはやった方がいいと思います。とはいっても、摩擦力を保持する役割を担う、カバーストックに含まれる可塑剤は、次第に飛んでいってしまいます。そうなると、いくらオイル抜きや表面研磨をしようとも、思うようにはリアクションが復活しなくなってきます。ゲーム数の多い人で半年、それほど多く投げない人でも、やはり1年ぐらいが寿命と考えておいた方がいいと思います。

プロボウラーは、パフォーマンスが落ちてきた、ピンの飛びが悪くなってきたと思ったら、すぐに新しいボールを開ける人が多いようです。ボール契約をしていて、メーカーから提供されるプロはそれでいいのでしょうが、自分で購入する一般のボウラーにとっては、そういうわけにはいきません。できるだけ長く、最初のパフォーマンスを維持できるように、適切なタイミングでオイル抜きや表面研磨などのメンテナンスをすることをお勧めします。

著者プロフィール
日坂義人(ひさかよしひと)
1949年生まれ。東京都出身。ドリラー・インストラクター歴47年。神奈川県のスポルト八景ボウルとハマボールに店舗を持つヒサカプロショップ代表。日本オリンピック委員会強化スタッフ・JPBA理事、JBC指導委員会認証部会公認ドリラー。JPBAインストラクター委員会メンバー。インターナショナルシルバーコーチ。

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