ボールの進化によってボウリングはどう変化した?

ボールの進化によってボウリングはどう変化した?

④ 慣性モーメントをボールに応用

これまではボールの表面素材(カバーストック)の変化に焦点を当ててきました。実際ボールのパフォーマンスに最も影響するのは表面素材なのですが、今回は少し寄り道をして、ボールの構造の変化について、触れてみたいと思います。

ボールに指穴をあけたとき、その分だけ減量されるので、それを補うためにウエイトブロックというものがありました。しかし1980年代に入ると、ボールの中心の比重を重くすると、よりボールが転がりやすいという、慣性モーメントの理論が、物理的な応用としてボールのデザインに組み込まれるようになりました。

何年だったか正確には覚えていませんが、ハンマーがそのさきがけだったと記憶しています。当時まだ3万円台が中心だったところに“ブラックハンマー”は、いきなり5万円くらいの販売価格がつけられていました。しかしその当時はまだ、中心が重ければどうなるかというようなことはほとんど考慮されず、ルール上のバランスで前後左右に指穴をずらして、オフセットするぐらいしか考えつきませんでした。

そして90年代にはブランズウィック社から、今までのルール上のバランスに対するオフセットではなく、回転軸にコアの向きをどうレイアウトするかという、ダイナミックバランスの考え方を取り入れたファントムが登場、さらに90年代半ばにカンタムというボールが発表されます。とくにカンタムは、慣性モーメントの応用で、低慣性=センターヘビー(ボールの中心を重くする)から高慣性=カバーヘビー(ボールの表面近くを重くする)、その中間と、3タイプのボールが同時に発表されました。つまり慣性モーメントの違いでボールの転がりを変えるという、表面素材に加えて、力学的な応用が組み込まれたのが90年代でした。

それ以降、ボールの構造についても開発競争が続いていますが、同時にUSBCは、スポーツの用具としてのスキルを制限しようと、さまざまな規制を作っています。

もうひとつ、ボールの構造における進化は、非対称コアの登場です。1990年代までのコアは、ほとんどが左右対称形をしていましたが、2000年代に入ってコアの形状によって、軸移動の仕方が変わるということが発見され、各メーカーは、コアの形状に、新たな開発の矛先を向けるようになりました。近年は、カバーストックにコアの形状を組み合わせて、ボール個々の特性あるリアクションを生み出そうというのが、開発の方向性のようです。そして非対称コアの登場は、ドリルの世界にも変化を促しましたが、ドリルについては、次号で少し詳しく述べることにします。

著者プロフィール
日坂義人(ひさかよしひと)
1949年生まれ。東京都出身。ドリラー・インストラクター歴47年。神奈川県のスポルト八景ボウルとハマボールに店舗を持つヒサカプロショップ代表。日本オリンピック委員会強化スタッフ・JPBA理事、JBC指導委員会認証部会公認ドリラー。JPBAインストラクター委員会メンバー。インターナショナルシルバーコーチ。

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