連載読み物
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ボールの進化によってボウリングはどう変化した?

⑦ メンテナンスでボールの寿命は延びる

先月号で、ボールの性能が飛躍的に向上した一方で、寿命がどんどん短くなっているというお話をしました。

メーカーによれば、例えばオイル抜きも何もしないで使い続ければ、100ゲームで間違いなくリアクションが低下するということです。どれぐらい低下するかといえば、実験データでは板目で3枚くらい曲がらなくなるようです。そこで今月号では、もともとのパフォーマンスをできるだけ長く維持するための方法をお話しします。

今のボールの表面はミクロ粒子の結束集合体で、滑らかに見えて、細かい凸凹があります。わかりやすくいえばスポンジのようなもので、その凸凹の穴の部分に、レーン上のオイルがどんどん吸収されていきます。とはいっても、際限なく吸収できるわけはありません。ある一定のところまでいったらそれ以上は入らないので、それを吐き出してあげないとパフォーマンスが落ちるというわけです。

まずお勧めしたいのが、マイクロファイバータオルの使用です。ボールが戻ってきたときに、ボウラーの皆さんはトラックについたオイルをタオルでふき取っていると思いますが、普通のタオルの繊維では、ミクロ粒子の中まで入っていかないので、メーカーもマイクロファイバーの使用を奨励しています。

最近は、どこのメーカーからもマイクロファイバータオルが発売されていますし、また販促品として、ボールを購入したときに一緒にくっついてくる場合もあります。

もちろんタオルでふいただけでは取り切れないので、今一般的に行われているのが、オイル抜きという方法です。私は、50~60ゲームごとにはやるべきだと思います。

たいていの場合はセンターやプロショップにお願いして、オイル抜き器でやってもらっていると思います。そのオイル抜き器の機能は、中のお湯を循環させて、多少の熱を加えてボール表面を洗い流すというメカニズムですから、ボールを家に持ち帰るのが煩わしくなければ、自分でも簡単に行えます。まず市販のオイルリムーバーを吹きかけて中の汚れを浮き出させ、バケツの中に入れたお湯で洗い流せば、同じ効果が得られると思います。そのときに気をつけてほしいのは、お湯の温度です。

近年のボールは温度に敏感で、摂氏10度から33度ぐらいの常温で保管していれば問題ないといわれています。しかし、例えば真夏に車のトランクに入れっぱなしにしている人も多いと思いますが、明らかにその範囲を超えてしまいます。

オイル抜きにしても、一時そのためのヒーターが発売されていましたが、70度ぐらいまで温度が上がってしまい、ボールの中の可塑剤が表面に浮き出てきて、最終的にボールが割れてしまうというようなこともありました。だからボールを洗う際のお湯の適温をメーカーにきいたところ、53度ぐらいにとどめるようにといわれました。

次号では、ボールの寿命を延ばすための、もうひとつの方法をお話しします。

著者プロフィール
日坂義人(ひさかよしひと)
1949年生まれ。東京都出身。ドリラー・インストラクター歴47年。神奈川県のスポルト八景ボウルとハマボールに店舗を持つヒサカプロショップ代表。日本オリンピック委員会強化スタッフ・JPBA理事、JBC指導委員会認証部会公認ドリラー。JPBAインストラクター委員会メンバー。インターナショナルシルバーコーチ。

⑥ パーティクル&オイル吸着カバー

先々月、先月号と少し話が脇道にそれましたが、今月は再びボールの表面素材(カバーストック)の話に戻します。

ボールの進化の歴史をたどると、不思議に10年ごとに大きな変革期を迎えています。80年代がウレタンの時代なら、90年代はリアクティブの時代というところまではお話をしました。そして2000年代は、パーティクルの時代といえると思います。

2000年に、米・ブランズウィック社が、初めてプロアクティブという素材を発表します。プロアクティブというのは固有名詞であって、リアクティブ素材にさらに固形の添加物を混ぜ合わせることで、表面に細かい粒子の突起ができるもので、分類ではパーティクルということになります。

ボールの開発競争は、あくまでもリアクティブウレタンをベースに、それにどんな添加物を加えるかという世界になっていきました。メーカーは企業秘密として、細かい情報を開示していませんが、例えれば自動車のタイヤのスタッドレスみたいなもので、加える添加物によって、ボールの表面にいろんな凸凹ができる、その凸凹の違いが、それぞれのボールの個性になっています。

最初に述べた、表面素材の進化は10年ごとに訪れるという流れからは少し外れますが、2007年にまた新たな革新がありました。米・エボナイト社がオイル吸着カバーという表面素材を発表します。

本来はこれも添加物によるものですが、化学合成によってさまざまな表面粒子形状を形成する製造法です。

同時に、突起物を用いている従来の製造法は、ナノレベルまで粒子が細かくなり、すべてが粒子の結束集合体という方向に進化してきました。

この時点で“パーティクル”という表現はほとんど死語になり、“オイル吸着カバー”という言い方が一般的になっています。

このオイル吸着カバーというのは、ボール表面の凸凹のなかに、レーンのオイルを閉じ込めることによって、摩擦力を保持しようというメカニズムです。そしてその素材が、その後のボールの主流にというよりも、現在新しく発表されているボールの表面素材は、オイルを吸着しないものはないと、どのメーカーもいっています。

オイルを閉じ込めるといっても、もちろん際限なく閉じ込められるわけではないので、そこにどんどんオイルが吸着すると、逆に摩擦力が低下してしまいます。それを排出しないと、そのボールが本来持っている摩擦力を維持できません。

近年のボールは、かつてないほどのパフォーマンスを得ることができる一方で、寿命がどんどん短くなっているのが現実です。次号では、現在のボールとの賢い付き合い方を中心にお話をします。

著者プロフィール
日坂義人(ひさかよしひと)
1949年生まれ。東京都出身。ドリラー・インストラクター歴47年。神奈川県のスポルト八景ボウルとハマボールに店舗を持つヒサカプロショップ代表。日本オリンピック委員会強化スタッフ・JPBA理事、JBC指導委員会認証部会公認ドリラー。JPBAインストラクター委員会メンバー。インターナショナルシルバーコーチ。

⑤ ボールの構造の変化でドリルも進化

先月号で、ボールの構造が変化してきたという話をしました。その変化は、ドリルにも大きな影響を及ぼしました。

私の本業でもあるドリルは、もともといかにその人の手(指)にフィットするボールを作るかが、仕事の大半でした。それは今も変わらないのですが、加えてレイアウトといって、ボールのどこに穴をあければその人にとって有効かというのを理解しなければ、あけられない時代になっています。

ドリル理論のなかに、スタティックバランスというのがありました。しかしそれは単なる現象であって、それがなぜそうなるかという物理的な解明はその時代にはなされませんでした。私もそうでしたが、1990年代のファントムの登場から、ようやく動的バランスに注目するようになりました。

遠心力によって回転軸にぐらつきが起こる。そのぐらつきによってボールの表面にフレアーという油の線がつく。それが広くなればなるほど、摩擦力に影響があるということがわかってきました。ではそれを起こさせるには、どういうふうに中玉にぐらつきを与えるドリルが必要かということが、そこではじめて求められるようになってきました。

ドリル理論もスタティックバランス(物理的には静的バランス)から、ダイナミックバランス(動的バランス)へという転換期が、1990年代から2000年にかけてありました。さらにそれまでコアといえば左右対称形でしたが、2000年代に入って非対称コアの登場とともに、マスバイアス理論という新たなレイアウトの手法が発見されます。

マスバイアスとは、質量の偏りを表した米国メーカーによる造語で、慣性モーメントやジャイロ慣性といった物理的な作用を利用して、ボールの回転軸の移動速度を変化させ、ブレイクポイントやバックエンドリアクションを調整するといいう、新たなレイアウト手法です。そのために設計上、意図的にコア形状を非対称にする必要性があり、コア形状も年を重ねるごとに進化を遂げ、現在に至っています。

もうひとつ、ドリルに変化を促したのには、投球スタイルの変化がありました。

まっすぐ投げてポケットに持っていくには、リフトアンドターンという技術が求められましたが、ボールの進化によって勝手に曲がってくれるわけですから、むしろ手の平をまっすぐ向けていたほうがいい。そうすると、回らないためには指穴の角度をどうするかを考えないといけない。

さらにローダウンといわれるような、高速回転を出すためのリリースでは、それまでリスタイを使って手首を固定していたのが、リスタイを外して手首を使いなさいというように変わってきた。また指先でリフトをして回転を与えていたのが、手のひらで前にこぼすようなリリースに変わってきた。その極致が、両手投げだと思います。

そういうふうに、投球技術が変わることによって、ドリルのフィッティングも変化せざるをえなくなってきたというのが、実情です。

著者プロフィール
日坂義人(ひさかよしひと)
1949年生まれ。東京都出身。ドリラー・インストラクター歴47年。神奈川県のスポルト八景ボウルとハマボールに店舗を持つヒサカプロショップ代表。日本オリンピック委員会強化スタッフ・JPBA理事、JBC指導委員会認証部会公認ドリラー。JPBAインストラクター委員会メンバー。インターナショナルシルバーコーチ。

④ 慣性モーメントをボールに応用

これまではボールの表面素材(カバーストック)の変化に焦点を当ててきました。実際ボールのパフォーマンスに最も影響するのは表面素材なのですが、今回は少し寄り道をして、ボールの構造の変化について、触れてみたいと思います。

ボールに指穴をあけたとき、その分だけ減量されるので、それを補うためにウエイトブロックというものがありました。しかし1980年代に入ると、ボールの中心の比重を重くすると、よりボールが転がりやすいという、慣性モーメントの理論が、物理的な応用としてボールのデザインに組み込まれるようになりました。

何年だったか正確には覚えていませんが、ハンマーがそのさきがけだったと記憶しています。当時まだ3万円台が中心だったところに“ブラックハンマー”は、いきなり5万円くらいの販売価格がつけられていました。しかしその当時はまだ、中心が重ければどうなるかというようなことはほとんど考慮されず、ルール上のバランスで前後左右に指穴をずらして、オフセットするぐらいしか考えつきませんでした。

そして90年代にはブランズウィック社から、今までのルール上のバランスに対するオフセットではなく、回転軸にコアの向きをどうレイアウトするかという、ダイナミックバランスの考え方を取り入れたファントムが登場、さらに90年代半ばにカンタムというボールが発表されます。とくにカンタムは、慣性モーメントの応用で、低慣性=センターヘビー(ボールの中心を重くする)から高慣性=カバーヘビー(ボールの表面近くを重くする)、その中間と、3タイプのボールが同時に発表されました。つまり慣性モーメントの違いでボールの転がりを変えるという、表面素材に加えて、力学的な応用が組み込まれたのが90年代でした。

それ以降、ボールの構造についても開発競争が続いていますが、同時にUSBCは、スポーツの用具としてのスキルを制限しようと、さまざまな規制を作っています。

もうひとつ、ボールの構造における進化は、非対称コアの登場です。1990年代までのコアは、ほとんどが左右対称形をしていましたが、2000年代に入ってコアの形状によって、軸移動の仕方が変わるということが発見され、各メーカーは、コアの形状に、新たな開発の矛先を向けるようになりました。近年は、カバーストックにコアの形状を組み合わせて、ボール個々の特性あるリアクションを生み出そうというのが、開発の方向性のようです。そして非対称コアの登場は、ドリルの世界にも変化を促しましたが、ドリルについては、次号で少し詳しく述べることにします。

著者プロフィール
日坂義人(ひさかよしひと)
1949年生まれ。東京都出身。ドリラー・インストラクター歴47年。神奈川県のスポルト八景ボウルとハマボールに店舗を持つヒサカプロショップ代表。日本オリンピック委員会強化スタッフ・JPBA理事、JBC指導委員会認証部会公認ドリラー。JPBAインストラクター委員会メンバー。インターナショナルシルバーコーチ。

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